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NOVEL
「目覚めの時 第一章」
ー飯ー

旅に出た。
日帰りのつもりだった。
しかし、唐突にそれは始まった。
伊豆あたりまで車で飛ばして、魚でも食って、海を見て帰るつもりだった。
確かに、伊豆までは何も変わった事はなかった。
快調そのもので、珍しく道路も空いていた。前日から予定していたうまいハマチを 出してくれそうな店について駐車場に車を入れようとすると、

『只今、満車です。しばらくおまちください。』

と書いてある看板が入り口の所に置いてある。まぁ、急いでいるわけでもないのでのんびり待っていると、反対側にある出入り口から車が出て行くのが見えた。

「結構、すぐにはいれるな。よしよし。」

しかし、一向に看板がはずされる気配はない。

「中でも何台か待ってるのかもしれないな。ふむふむ。」

こうしてのんびり構えている内に後ろに何台かので車が並んでくる。 かれこれ1時間の間に4台の車が出ていった。いくら何でもそろそろ入れてもよさそうなもんだ。と思っていると、奥から人のよさそうなおばちゃんが出てきて、

「1台入ってもいいよ~。」

と手招きをしている。ぼくもにこにこしながら車を奥に進めた。 すると、2つ角をまがった所に、

『只今、満車です。しばらくおまちください。』

と書いてある看板があるではないか。しかも、僕の前には2台の車が並んで待っているのだ。とんだ、くわせものである。今さら後には引けないので高ぶる気持ちを押さえながら、

「まぁ、急いでいるわけではないので、のんびり、待てばいいか。」

などとつぶやいて、ダッシュボードから文庫本を取り出した。
ぱらぱらページをめくっていると、さっきのおばちゃんがやってきて、

「ここは、読書禁止なんよ。もうしわけないけど本は読まんといてね。」

などとわけの解らん事をいいだした。世の中、車についていろんなわけの解らない決まりや、マナーなどといってみんなに一律に同じ事をさせるような風潮があるが、なんで本を読んではいけないのか。全く納得できない僕はおばちゃんに、

「なんで、本を読んではいけないの????」

文字どおり?マークを頭中にちりばめて聞くと、おばちゃんは、

「ようわからんけど、規則だからしかたないんよ。悪いねえ。」といった。

おばちゃんには?マークが見えなかったようだ。駐車場の交通整理のおばちゃんに聞いた僕が悪かったのかもしれない。おばちゃんは上の人から言われた事を客に伝えているだけなのだ。そうか、わかった。 もうしばらくおとなしくしていてやろう。いらいらしつつもぼくはハマチの刺身の事を考えるようにして車の中でおとなしくしていた。そうこうしている内に時間はたって気がついたらもう午後3時である。 しかたがないから野球中継でも聞こうと思い、ラジオのスイッチを入れた。何だか嫌な予感はしていたのだが、やっぱり、おばちゃんはすまなそうな顔をしながらこっちへ近付いてきた。

「ここは、野球中継禁止なんよ。もうしわけないけど野球中継は聞かんといてね。」

ラジオ禁止じゃなくて野球中継禁止とはどういうことだ。おばちゃんにわけを聞いてもどうせ解らないだろうと思い、黙ってラジオを切った。おばちゃんはあわてて

「ラジオはいいんよ、ラジオは。野球がだめなだけだからね。」

おばちゃんは親切のつもりで言ってくれたのだろうがこっちは何を聞いたらいいのか解らなくてスイッチを切っているのだ。いちいちあれはだめ、これはだめなどと言われるのは仕事だけで十分である。僕は自由に生きたいのだぁ。 などと大袈裟に喚いても仕方がないので、再び、ううむと唸って静かにする。とにかく早く車をとめてハマチ定食を食べたいのだ。このさい、少しくらいの店の横暴は大目にみようではないか。僕ももういい大人なのだし、ね。 そんな事より、早く車をとめて、ハマチの刺身を食べたい。これ以上待たされるならこの店を諦めて別な店でもいいのだ。何もここでなくてはぜったいだめだからな、という意気込みでやってきているわけではないので違う店に行けばいい。 しかし、ここで新しい店を捜そうとガイドブックをごそごそ捜していて気がついた。 読書禁止なのだ。そうか、新しい店を捜す事もできない。読書禁止がこんなに辛い事だとは思わなかった。う~む、これはもうしばらく我慢するしかないな。