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NOVEL
「目覚めの時 第二章」
ー飯2ー

ふと気がつくと後ろにかなりの数の車が並んでいる。もう後戻りはできないのだ。人生とはまことにうまくできていて、気軽に動きだしたんだけど、すこしすすむともうにっちもさっちもいかなくなっていて、その流れから抜け出すには大変な時間と努力が必要になってしまう。 今、まさにその状態なのだ。気軽に刺身でもと思っていたら全然気軽ではなくなってしまった。もう、待ち続けるしか道は残されていない。完全にハマっている状態、急いでないとはいえこの状態は余りにも無意味な時間である。 もしかすると神様が僕の我慢指数があまりにも低いので修行もしくは試練をあたえてくれているのかもしれない。

「ぼやっとしとらんで、前に進んでくれんかいのう。」

目の前におばちゃんの顔のアップがあった。

「うぐっ。」

いつの間にか前が開いていた。車を前にすすめると駐車スペースが開いているではないか。車を止めつつ、思ったよりすんなり入れたな、刺身定食はいくらかな。 簡単に考えていた。なぜか、それぞれの駐車スペースの後ろに入り口があって、大きく『入り口』と書いてある。とても怪しいが入るしかあるまい。ドアをあけると薄暗い通路がながく続いている。 近ごろの店は、内装に仕掛けがしてあってどうなっているのかさっぱりわからない。さらにどんどん進んで行くとそこに『入り口』と書いてあった。さっきのは何の入り口だったのだろう。中に入って行くとなぜか外だった。 小さな船着き場のようである。向こうからポンポンと音をたてて船が入ってくる。船の上で食事ができるようだ。どうりで待たせるわけである。風情があって大変よろしい。なんだかこころがうきうきしてきたぞ。船のお腹には『第4魚大王』と書いてある。わかりやすいなぁ。

「にいちゃん、何食べたいんや。」

船頭さんのようなおいちゃんが訪ねてきた。料理を作る板前さんではないようだが、他に人が乗っている様子はない。

「とりあえず、ハマチの刺身かなんかありませんかねぇ。」

ひかえめにたずねると、おいちゃんは、

「とりあえずなんて言ってると後でどうなっても知らんでぇ。」

などと言うのである。うむむっ、どういうことだ。なんだかわかんないので僕はおいちゃんに言い直した。

「ハマチ定食をください。」
「にいちゃん、今、定食って言ったね、定食と。」

おいちゃんの顔がだんだん青ざめてくるのがわかった。

「わかったよ、乗ってくれ。早く出ないと日が暮れるからね。」

おいおい、日が暮れるって今お昼の2時だよって、もうこの店に入ってから3時間もたってるよ、おい。いつになったら御飯が食べれるのかわからないなぁ。 船は出港したけどいったい何処に行くんだろう。おいちゃんにそれとなく聞いてみた。

「おいちゃん、いったい何処で食べるの?」

なんでそれとなく聞いてるんだろう。たかが昼御飯なのに。

「にいちゃん、定食って言ったろう。近海で定食を食べるのは禁止なんだよ、近海は一品ものって決まってるんだから沖合いに出ないとしかたないよ。わかるだろ。」

どひゃ~っ、そうだったのか。まさか海に出てまでわけの解らない禁止事項があったなんてどこかに一覧表はないものだろうか。こうなったらこのおいちゃんに色々聞いてみよう。世の中、いつからこうなっちゃったんだ~。

「定食はどの辺で食べるのが一番良いの。」
「やっぱ、定食は青ヶ島のあたりかなぁ、ほんとは母島の沖合いが最高なんだけどねぇ。」

なにぃ、青ヶ島だと、こんな船で出て行って着くのは明日の夕方じゃないか。だいたいちょっとしけたら生きて帰れるかどうかも解らない。

「おいちゃん、今日は何処で食べるの?」
「やっぱ、青ヶ島のあたりがいちばんいいのう。」
「今日中に食べれるのかなぁ。」
「冗談言っちゃいけねぇ、さっき降りた客は海がしけて3週間かかったんだぜ。」

なんだと~、冗談言っちゃいけないのはおいちゃんの方でしょう。行って帰って4日かかるではないか。ハマチ定食なのに......、待てよ?着くまでどうしたらいいんだ。食事はどうするんだ。飯食いに行くのに飯の心配してる俺はなんなんだ。