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ESSAY
「寝室のくつわ虫 第五章」
ー地下の生活ー

店の奥には地下に繋がる階段があって、ヤシダンはどんどん降りて行く。地下組織はやっぱり地下にある物なのか。だから地下組織っていうのかなぁ。暗い通路を進んで行く。 なんだか板張りで粗末で今にも天井が崩れてきそうな狭い所が嫌いな僕にとってはなんだかちょっと辛い感じがする場所が続いている。明かりがほとんどないので、ここでこのままほっとかれたら30秒のカウントダウンの後に大声をはりあげそうだ。 気が付くと僕は大量の汗をかいていた。

「せいちゃん、着きました、着きました」

鉄の大きな扉の前でヤシダンが言った。そして、扉の横にあるオートロックのパネルにあっという間に30桁のパスワードを入力していく。つい何年か前まではパスワードと言えば10桁くらいだったのに今や30桁。 こんなもん覚えられるか。そのうえ、指紋確認と音声確認が当たり前、ここまでしてセキュリティを充実させて入れなくなったらどうするんだ。今、世の中はパスワードの桁数に関してあまり意味がないという風潮がある。 いくら桁数を増やしてもすぐにやぶられてしまう。だから、パスワードの桁数ではなく、違った管理体制を整えるべきだという意見が多くなっている。しかし、国際パスワード審議会は、世界的天下り官僚のたまり場で全然、機能していない。 なにしろ、真剣に働いているのは犯罪者か服役中の労働者だけである。このままでは、パスワードはどんどん桁数を増やしていって誰もセキュリティチェックをパスできなくなってしまう。今はとにかくヤシダンの側にくっついてどんどん進んでいく。 扉の先にはこれまた寂しい木のテーブルと椅子、その上に前世紀の遺物のような巨大なタワーコンピュータが1台。今どきどうしろと言うのか13インチのモニタが置いてある。

「ここが、せいちゃんの部屋です、3日ここで、4日外です」
「ここでなにをするのですか、ヤシダン」
「それは、この機械に聞くのです。わかります」
「ふぅ~ん、わかった、ヤシダン」
「ヤシダンは、仕事にいきます、夕方、ここにきます」

それだけ言うと、ヤシダンは行ってしまった。

「えらい所に来ちゃったなぁ」

実感である。回りを見ても何もない鉄の扉に鉄の壁。フラットフェイスになっているのでエンバイロメントソフトを使えばどうにでもなるだろう。 ん!待てよ、このコンピュータでそんなことできるのか?ちゃんとネットに繋がるかもわからないぞ。なつかしいスイッチ型の電源ボタンをオンの方に押す。

『ブィ~ン』

起動音がなった。以外と最新のシステムソフトウェアが入っているみたいだ。よそう通りコネクトソケットは付いていないらしい。付いていてもこっちがインターフェイスを持っていないのだから意味はないのだけど。

「こんなちっちゃいモニタまだあったんだなぁ」

おもわず、独り言を言っていた。モニタ表示がシステムの表示をしている。
『WELCOME TO NOGI SYSTEM XXXII』

「おっ、最新じゃん、見かけによらないねぇ」

アプリケーションリストアップを行って内容を確かめる。一通りは揃っているようだ。メッセージの着信アイコンが点滅している。

「さてと、鬼が出るか蛇が出るか、どうせ、あっちゃんだろうけど」

メッセージのチェックアイコンをダブルクリックする。

/急な話で申し訳ない。1ヶ月待つ時間がなくなってしまった。/
/添付ファイルの解析をしてもらいたい。/
/このファイルは日本国内で最近配付されている政府の広報ファイルなのだが/
/どうもおかしい。今、///でこんなことをするのは///////////

メッセージが途中で切れてしまっている。これでは添付ファイルもちゃんと来ているかどうか不安になってくるなぁ。添付ファイルの解凍を試してみる。
『ALERT UNKNOWN FORMAT OR DAMAGED FILE』
やっぱり壊れている。しょうがないのでソースではきだす。まずは復元しなければいけない。思ったよりダメージは少ないようでソースで見れば何とかなりそうだ。せめてエクステンションかクリエータが残っていればもっと簡単だったのに。 と、思いながら自分が何に足を突っ込んでいるのか考える。政府の広報なのだからそこから考えれば政治絡みの事件にでも関わっているのか。もしそうだとすると、とても危険なのではないだろうか。 やってはいけない事をやってるような、でも、すでに今さらどうしようもない所まで来ているような、なんだかイライラする状況に置かれている。

「まぁ、焦らずに始めるとするか」

いつもの、のう天気な自分に戻ってマイペースで作業を始める。すると、いきなり扉のオートロックが点滅を始めて、点滅が赤から緑に変わる。扉が開くとそこにはよっちゃんがいた。よっちゃんはいつものニコニコ顔がなくてすこし、沈んだような雰囲気だ。

「せいちゃん、あっちゃんからメッセージ来てた?」
「ああ、ファイルの解析をして欲しいそうだよ、でもデータが壊れてて今から復元するとこ。メッセージも途中で壊れてて何だか良くわからないけどね」
「そうか、やっぱりな。こっちに届いたメッセージも途中で壊れてたんだ。だからもしやと思って来てみたんだけど、解析の方は出来そうかい?」
「大丈夫だと思う、少し時間はかかるけどね」
「そうか、良かった。今、ヤシダンが情報を集めに行っている。回線の異常であればいいのだけれど、そうでなかったら向こうで何か起こっているかもしれない。せいちゃんは気が付いてないだろうけど、いつも、危険な所をうろうろしてるんだよ。だから、手を回して安全な所に移動させてるんだ」
「危険てどういう意味だい?なんで僕を移動させるの?」

立て続けに質問をする。だいたい、最近おかしいのだ。ついこの間までは、普通に働いている小市民のひとりだったのに、今の状況はなんだ、服役中で国外追放で地下生活。どう考えてもおかしい。そろそろ、このもやもやした感じをなんとかしたいのだ。 今、自分がしている事は何で、何のためにやっていて、何が残るのか。それが知りたい。そうでしょう、今は、まるで将棋のコマのように誰かが動かしてる感じがする。いくらのう天気な僕でも少し考えるよ。

「今、東京はとても危険なんだ。いろいろわかって生活してないとあっという間にデータ化されてしまう。ネットに入っている間に政府の役人が国民をどんどんデータ化してしまう。今、テストケースで東京の人間をどんどんデータ化して行っている。ひどいもんだ」
「でも、データベースに載せたり、今では世界総データ化されてるんじゃないの?」
「違うんだ。全てをデータ化して必要な時に必要な人だけを解凍して使うんだ、人としてね。人口調整だよ」
「もしも、そうだとしてなんで個人がこんなことやってんの。政治団体でも起こして対抗すればいいじゃないか」
「せいちゃんは、何もわかってないね。一連の行動で気が付かなかったかい。今、世界で働いているのは犯罪者か服役中の人たちだよ。政治をしている人の中に服役中の人はいない。じゃあ、誰が政治を動かしてるのか。わかるだろう」
「犯罪者」
「そう、今は犯罪といってもあまり流行らないから、みんな、政治に興味を持ってゲームを楽しんでたのさ。でも、ゲームってだんだんエスカレートしてくるだろう。データが足りなくなってきたので、データを増やすために勝手にデータ化をしようとしているんだ」
「で、どうなるの」
「だから、データ化されたくない人は自衛しなければいけない。簡単な事だよ。みんなふぬけのように飼いならされてるから、データ化されてもなんとも思わない。ゲームのコマを集めているだけだから少しくらいデータ化を拒むやつがいても大して気にしない。 かえってそれを潰すのが新しいゲームだと思っている。やな世の中だよ」

まさか、ここまで社会が変わってしまっていようとは、思ってもみなかった。僕はずっとコンピュータの中での暮らしが90%、外での暮らしが10%と現実逃避のような生活を生活だったから全然知らなかった。半ばデータ化されてるような生活だ。 でも、無理矢理というのは、今いちいやだなぁ。いや、まったくもって許せん。おのれショッカーめ、許さん。滝、行くぞ。ショッカーのアジトを突き止めるんだ。なんだか、急にやる気が出来てきたぞ。人間、目的がはっきりすると意欲がわいてくるもんだなぁ。

「じゃあ、このデータを解析してどうするの?」
「その出所からのアクセスを管理してやつらの動きを監視するんだ」
「監視して、それからどうするの」
「もうじき、あっちゃんが新しいシステムを立ち上げる。その時に、やつらに邪魔されないようにして、システム運営をするんだ」
「結構、壮大な話になってきたね」
「はじめから、壮大なの」
「わかった、3日もあればプロテクトエンジンはできるよ」
「期待してるよ、じゃあ」

なるほどねぇ、マップエンジンにプロテクトエンジンを埋め込むというのは、なかなかできないいたずらだから、僕が必要だったということか。だんだんわかってきたぞ。なんだかほんとにショッカーのアジトを突き止めるのが僕の仕事らしい。とりあえず、腹が減ったから何か食べよう。

「よっちゃんの差し入れにはなにがはいっているのかなっと」

さっき、よっちゃんが来た時、紙袋を置いていったのだ。ハニャレロの臭いがしていたのですぐに食べ物だとわかった。ガシャガシャと包みをあける。

「これは、どうみてもハンバーガーだよな。でも、ハニャレロ味のハンバーガーなんておいしいのかな?」

僕は、食べながら修復プログラムを書きはじめていた。